他院埋没法の糸? or 当院埋没法の糸?
3年近く前に当院でスーパークイック法+脱脂を受けた患者様から電話がありました。
目に異物感があり、眼科を受診したところ、まぶたの裏側から糸が出ていると指摘されたので、早急に診て欲しいとのことでした。
当院では手術をした患者様からこのような緊急の検診の依頼を受けた場合、直ちに対応しています。
大手病外科などでは、患者様から問い合わせがあっても、「様子を見て下さい」「3ヶ月待って下さい」などしか言われないことが多いですが、それでは医療事故にもつながりかねません。
目白ポセンシアクリニックでは、何か患者様から訴えがあればすぐに見せにくるようお伝えしていますし、今回のように緊急性のあるものであれば、可能な限り早急な対応をしています。
電話をもらってすぐ当日予約を取りました。
患者様にご来院いただき、すぐに手術室にご案内し、まぶたの裏をひっくり返しました。
通常の埋没法は横方向に糸を縫いますが、瞼板に縦方向に糸が縫われていて、その糸が飛び出ていました。
明らかに当院でやった手術ではありません。
当院の手術はこんな雑ではないし、裏から糸が見えるやり方で行っていないからです。
「当院で受ける前にどこかよそのクリニックで埋没法をお受けになられていますか?」とお聞きすると、「受けてません」と言われました。
そんなはずはないと思いながらも、水掛け論にしかならないのでそれ以上は議論せず、糸を抜糸しました。
当院で手術をお受けになられた患者様にこのような術後トラブルが発生した場合、何年経っても無料で抜糸を行っています。
他院の糸の抜糸であれば有料なので、もしかしたらそういった意味もあって受けてないと返事されたのかもしれないし、単に忘れていただけなのかもしれません。
後でカルテを読み返したら、最初の診察申込書に他院で二重の手術をお受けになられた申告がしっかりとご自身の筆跡で書かれていました。
しかし、それをどうこう言っても仕方ありません。
私が追求すれば患者様の気分が悪くなります。
患者様は本日のご来院時に、「仕上がりが良くて喜んでいましたが、糸が出てきました」とおっしゃっておられたので、当院と争うつもりはなく、純粋に検診と処置をご希望されていただけなのは明らかでした。
それなら私の方でも、3万円ほどの抜糸の費用をどちらが負担するのか争うより、患者様に気分良くいていただいた方が良いと判断しました。
糸は短い老朽化して脱色した透明の糸でした。
一般的には埋没法には青色の糸が使われます。当院の糸も青色です。まれに緑や黒の糸を使う先生がいらっしゃいます。
以前、韓国で埋没法の手術を受けて抜糸をご希望された患者様がいらっしゃいました。抜糸を行うとまだやったばかりなのに透明の糸が出てきてびっくりしたことがありました。
韓国の先生は透明の糸の方が目立ちにくいと判断されて透明の糸を使ったのだと思いますが、埋没法のメリットは気に入らなければ抜糸ができることです。
透明の糸を使えば、抜糸が困難になるので、お勧めしません。
その意味で、ほとんどの先生が色が着いた糸を使って埋没法をされておられるのだと思います。
そんな色がついた糸も経年変化で糸が脱色してしまって透明になることがあります。
今回の糸はそんな老朽化して脱色した透明の糸でした。
患者様にもお見せしましたが、わずか3年弱でこんなに老朽化し、脱色することはありません。
糸の古さからも、手術のやり方からも、明らかに当院の糸でないことが判明してホッとしました。
万が一にでも、こんな雑な手術をしていたとしたら、自分で自分が許せなくなります。
危うく自分の技術に自信を失うところでした。