ポセンシアクリニックの安全性への取り組み ～Hylenex（ヒアルロニダーゼ）～
一昨日、ヒアルロン酸を溶かせる薬であるヒアルロニダーゼがアメリカから届きました。
ヒアルロニダーゼはいろんな国のいろんな会社から発売されていますが、今回届きたのはアメリカからFDAの承認を受けたHylenexです。
ヒアルロン酸注入でヒアルロン酸が誤って血管内に入ってしまった場合、血流がなくなるので組織を壊死（腐るということ）を起こしてしまいます。目の動脈を詰まらせてしまった場合には、失明することもあります。
以前、大手美容外科で鼻にヒアルロン酸注入したら小鼻が壊死を起こしてしまい、週刊誌ネタになったことがあります。
もちろん、目白ポセンシアクリニックではそのようなケースは一例もありませんが、リスク管理は大切です。そのため、万が一ヒアルロン酸注入で予期しないことが起きた時溶かせるようにヒアルロニダーゼを用意しておくことは大切です。
ずっと以前にヒアルロニダーゼの大切さが言われ始めた頃、とにかくヒアルロニダーゼを持っておいた方が良いと思い、発注したらインドのヒアルロニダーゼが届きました。
包装からしてうさん臭く、とても使う気になれませんでした。
業者を変えて注文すると今度は韓国製のものが届きました。
ヒアルロニダーゼはアレルギー反応を起こしやすいことでも有名です。ヒアルロン酸を溶かせることを気軽に考えている先生も多くいらっしゃいますが、私は万が一アレルギー反応を起こしたら大変なことになることがあるので、ヒアルロニダーゼは原則として使わないようにしています。
例えば、他院でヒアルロン酸を入れ過ぎて失敗したらから溶かして欲しいと言われても、他院で溶かして下さいとお断りしてきました。
わずか数万円の手数料のためにアレルギー反応が起こって医療事故になったら、これまで私が築いてきた開院以来医療訴訟ゼロという15年間の信用がパーになってしまいます。
ヒアルロニダーゼには、動物（牛や羊）由来のものとヒト由来のものがありますが、ヒト由来のものの方がアレルギー反応を起こしにくく安全と言われています。
最近読んだ医学書の中にHylenexは料金は高いが最も安全と書かれていたので、著者に連絡をとって入手できる会社を聞き（幸い、知っている会社でした）、発注をしようと電話をかけました。
「もしもし、アメリカのヒアルロニダーゼのHylenexが欲しいのですけど」
担当の方は、
「先生、Hylenexは高いのでお勧めしていません。もっと安い薬でいいのではないですか？」
と言われました。
高い薬を売った方が会社にとっては利益になるはずです。担当の方は親切でそう言ってくれましたが、私にとっては薬の値段より安全性の方が大切です。
特に、当院でヒアルロニダーゼを使う場合をシュミレーションすれば、血管内にヒアルロン酸が詰まって壊死を起こしかけて一刻も早くヒアルロン酸を溶かさなければいけない状況が想定されます。
そんな緊急事態にヒアルロニダーゼを注入してアレルギー反応が起きたとなったら、クリニックの信用は丸つぶれです。
これまで当院で壊死を起こすことがなかったし、今後もないはずです。高い薬は、業者さんが心配してくれたように無駄になるでしょう。しかし、薬代7万円程度が無駄になるのが、保険になっているのです。
保険も誰かが死んで、保険代が無駄にならなくて済んだと喜ぶ人はいません。
保険は無駄になったら喜ぶべきものなのです。
私はこの薬代の7万円を喜んで無駄にしたいと思っています。
数万円をケチるのでなく、最も高価だが最も安全性の高い薬を用意しています。
このようにコストは気にせず、ベストの医療が実践できるように努力していますので、安全面についても安心してご来院いただければと思っております。
