傷跡のケアにこだわり続けるポセンシアクリニック
- 傷跡をきれいにするためにはなんと言っても丁寧できれいな縫合が一番重要
傷跡をきれいにするためには、なんと言っても傷をピタッと合わせたきれいな縫合が一番大切です。
きれいな縫合をするには、時間をかけて丁寧に行わなければいけません。
1日何十件の手術をしたとか、これまで何万件の手術をしたと自慢している先生がいますが、本当に丁寧に手術をしようとしたら、そんなに多くはできません。
医師の経歴を見る際には、そのような数の多さに惑わされるのでなく、医師の医療にかける真剣さを読み取るようにして下さい。
それでは、きれいに縫合するとはどういうことか見ていきましょう。- きれいな縫合へのこだわり
傷跡を残さないために一番大切なことは傷を隙間なくピタッと縫い合わせることです。
しかし、これは厳密にはとても技術が要ります。
まず、人間の皮膚は柔らかく、細かく見るとどの部分もカーブがあります。
固いまっすぐの板を切って合わせるのと違い、皮膚自体が柔らかく、土台も軟部組織があって柔らかく、かつ曲がっているのに、なるべくまっすぐにピタッと縫い合わせていかなくてはいけないのです。
普通に縫えば、縫合している傷と傷との間に少し隙間ができたり、傷と傷と間がずれて段差ができたりしてしまいがちです。
これをいかに隙間なく、段差も出さないで縫合できるかが腕の見せ所なのです。
この技術は知識だけではどうすることもできません。
長い年月をかけてじっくりと技術を熟成させていかなければ習得できない技術です。- きれいに縫合しても術後の微細な出血で傷が開いてくるので丁寧に洗浄する
当院ではできる限り丁寧に縫合して、ピタッと傷を縫い合わせています。
しかし、術後は出血があります。止血は丁寧に行っていますが、それでも微妙に出てくる出血を止めることはできません。
この微妙な出血が傷の部分に溜まってくると傷と傷の間に隙間ができてしまいます。
せっかくきれいに縫合しても傷と傷の間に血液が溜まって隙間ができると傷は開いたまま治癒していくことになります。
傷が開いたまま治癒することで、その部分にへこみができたり、赤くなったり、色素沈着が起きやすくなります。傷跡をきれいにするためには、術者が丁寧に縫合するのはもちろんのこと、術後創部に血液が溜まらないように患者様が丁寧に出血を拭き取ることが重要です。
血液は最初は液体ですが、これが糊(のり)のように固まりはじめ、さらに固くなるとかさぶたになります。固くなればなるほど取り除きにくくなるので、傷跡はなるべく洗浄していただき、早期に取り除くようにしてください。
- 患者様にお願いしている術後ケアと当院でのアフターケア
ポセンシアクリニックでは、傷跡をきれいにするために、術後の出血をきれいに拭き取るよう患者様にお願いしています。
出血は丁寧に拭き取らないと血液が固まってかさぶたになります。
かさぶたになってしまうとご自身で取り除くのはかなり難しくなります。血液が固まる前に取り除いた方が簡単にできますが、かさぶたになっても何度も丁寧に水をつけて拭き取っているとぽろっと取れてきます。
しかし、これはなかなか大変なので、ご来院いただければ、かさぶたを溶かせる薬を使って処置しています。当院でプレミアムコースでお受けいただいた患者様には無料で行っています。大原則はかさぶたができないように丁寧に出血を拭き取ること。これができればかなりの確率で傷はきれいに治ります。
どうしてもかさぶたができてしまったらなるべく早く取り除くこと。
かさぶたができてしまったということは傷が開いている可能性がありますが、初期であればかさぶたを取り除けば傷が閉じてくる可能性もあるので、とにかく創部はきれいにするように心がけてください。- 丁寧に縫合するので抜糸は4日目とスピーディーなダウンタイム
傷はキレイに縫合されていれば、理論的には48時間ほどでくっつていてくるとされています。
通常、抜糸は7日目、早いところでも5日目くらいのクリニックが多いですが、ポセンシアクリニックでは丁寧に縫合して創部が早く治癒するので、原則として術後4日目に抜糸を行っています。(眉下切開では7日目)
縫合が丁寧なほど、抜糸までの期間は短くできます。
余裕を見て術後4日目に抜糸を行っていますが、どうしてもとご希望の方には術後3日目の抜糸も行っています。- 傷跡をきれいにするためのテープ固定や内服薬
傷は引っ張られる力が働くと、赤みが出やすくなったり、盛り上がったり(肥厚性瘢痕)、傷が伸びたりして傷跡として残りやすくなります。
引っ張られる力に対抗するためにテープ固定を行います。理論的には術後3~6か月間貼りっぱなしにするのが理想的ですが、テープを貼ったまま外出するのは目立ってしまって非現実的なので、ポセンシアクリニックでは家にいる間だけなるべくテープ固定していただくようにお願いしています。また、傷の赤みを早く消したりケロイド予防の作用がある内服薬(トラニラスト)をお出ししています。
傷は治るまで時間がかかります。表面的には治ったように見えても顕微鏡レベルでは3~6か月くらいかかるとされています。
そのため、内服薬は90日分お出ししています。- 傷跡をキレイにするために軟膏は必要?
軟膏を使った方が良いのか、よく質問を受けます。
これはドクターによって回答が異なります。
ポセンシアクリニックでは、傷と傷がきれいに合わさった状態で治癒していくのが一番傷がきれいに治るという考え方をしています。
軟膏を塗ると傷と傷の間に入って隙間が生じ、傷がふさがるのを邪魔する可能性があります。
また、軟膏に含まれた成分が傷に良く働く場合と、悪く働く場合があります。例えばステロイド剤など、傷を治す作用がある反面、毛細血管を増殖させてよけいに傷が赤くなる場合もあり、当院ではお勧めしていません。
軟膏は使わず、創部にゴミや血液が溜まらないようにきれいに洗浄するようにお願いしています。- 抗生物質について
ポセンシアクリニックでは、感染などの症状がなければ術後に抗生剤をお出ししておりません。
「抗生剤を出さないのですか?」と患者様から聞かれることがあるのですが、抗生剤は本来、感染した場合に傷の部分にいる細菌を判別して、その細菌にあった抗生剤を使うのが正しいのです。
抗生剤をむやみに使い続けると、抗生剤を分解したり無毒化してしまう因子を獲得した細菌(耐性菌)を生み出すことがあります。
これは現実に、抗生物質を多用する医療現場を中心に、多くの抗生物質に耐性を示す多剤耐性菌、とりわけメチシリンが効かないメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染が問題となっています。日本では、病気になる前から予防的に抗生剤を使ったり、何の細菌か分からないままむやみに広域に作用する抗生剤を使ったりすることが多く、これが感染の予防に手術後は抗生剤を飲むという誤解を一般の方々に持たせてしまうことになりましたが、以上の理由から、まったく間違えた薬の使い方なのです。
そのため、ポセンシアクリニックでは、抗生剤をお出ししておりません。しかし、どうしても抗生剤を飲まないと気分的に落ち着かないという方がいらっしゃいます。
どうしても抗生剤が飲みたいとおっしゃられる方に対して、通常の日本の医療機関で出されている、いろいろな菌に対して効果がある抗生物質をお出ししておりますので、ご希望の方はお申しつけください。- 消毒・洗浄についての当院の見解
消化器外科など、一般的な外科においては、殺菌能力の強い消毒液を使って術野を消毒してから手術をしたり、術後の創部(傷跡)も、殺菌能力の強い消毒液を使われています。
しかし、形成外科的な立場からは、殺菌能力の強い消毒液は正常な人体細胞も傷つけ、逆に良い結果につながらないと考えられています。一般的には、傷口からばい菌が入って化膿すると考えられていると思いますが、皮膚にいる常在菌が単独で創感染を起こすには、大量の細菌数が必要なのです。
特に美容整形の手術を受けに来られるような健康な方の場合、少々の細菌が創部から侵入しても、体内にある身体を守ってくれている貪食細胞の働きによって攻撃され、創感染を起こすのに必要な数に増えることはできないのです。それではどうして傷口から感染を起こすかと言えば、傷口や組織内に異物や壊死組織がある場合です。
これら感染源があると、きわめて少量の皮膚常在菌でも感染症状が発現するのです。
感染源として多いのは、縫合糸(特に絹糸)、血腫、動物性異物、植物性異物、かさぶた、人工物などがあります。
美容整形の手術では、絹糸(絹の糸)を使うことはほとんどありません。
ナイロン糸なので感染しにくいです。
問題は、血腫やかさぶたです。血腫とは、傷の中にできる血のかたまりです。
ポセンシアクリニックでは、血腫ができないように止血をしっかりと行います。
手術中にジュ、ジュという音や焦げ臭い匂いがしてこれは何ですかと患者様から聞かれることが時々ありますが、創部に電気を流して焼いて出血を止めているのです。
また、手術中に圧迫したり、術後にも冷たくて重い冷却材を患部に当てていただいたり、包帯をしっかりと巻いたりしていますが、圧迫することによって血腫ができるのを防いでいるのです。そして、かさぶたですが、これは出血をしっかりとふき取っていただくことが重要になります。
先ほども書いたように出血を手術中にできる限り止めるようにしていますが、完全に止めることは不可能です。
どうしても傷口から血が出てきます。これをそのままにしておくと、かさぶたになります。
かさぶたの問題点は、せっかくきれいに縫ってある傷口を開いてしまうことがあるのです。傷の治りを良くするには、傷の部分をなるべく湿らせて湿度を高くしておく方が良いと形成外科的には言われています。
しかし、きちんと縫合閉鎖が行われていたら、それだけで十分なのです。これには、私自身にも体験があります。
開院して2年目くらいのことだったと思いますが、それまではただ傷口は縫合するということくらいしか分かっていませんでした。
二重まぶたの切開法をした患者様が心配性の人で、術後の経過を診てほしいとおっしゃって術後2日目に検診に来られたのです。
私たちは普段、術後2日目の状態を診ることはありません。
驚いたのは、まだ術後2日目であったのに、傷がぴったりとくっついていたのです。
それまで私は抜糸が5日目にすると習っていたのでそれを信じていましたし、術後5日目くらいで傷がくっつくと漫然と思っていました。
しかし、術後2日目で傷がくっついていたのです。
人間の自然治癒力のすごさに驚かされると同時に、きちんと縫合さえすれば
傷は2日目にはくっつくのだから、きれいに縫合しないといけないと、それまで以上に意識して丁寧に縫合するようになりました。
そうすると、抜糸の時点できれいに傷が治っている人がさらに増えてきました。
また、術後4日目で抜糸するようになりましたし、どうしても3日目に抜糸をしたいとうい方にも対応するようになりました。
傷に対しての理解が深まり、技術的にも向上することができました。
この患者様のおかげで素晴らしい体験ができ、現在の傷が早くきれいに治るという当院の評判を作ってくれる原因となったのでした。美容外科医であれば、創部をきれいに合わせることに命をかけるべきだと思います。
これはかなり大変なことです。
まず、創部をまっすぐに切ることが難しいのです。
人間の身体は曲がっています。そして、皮膚は柔らかく、伸展性があります。
術者はまっすぐに切ってるつもりでも、後からみれば線がガタガタということは、未熟な術者であればよくあることなのです。
(これはある程度年数を経験されている医師がされた手術でも、傷跡を見れば、きれいに合ってないのを見受けることがあります)
傷をまっすぐに切らなければ傷はピタッとはつかず、どこかに隙間ができます。
まっすぐに切るだけでも、長年のトレーニングが必要なのです。
そして、丁寧な縫合も大切です。
ピタッと傷さえ合わせることができれば、傷は24時間~48時間以内にくっついてしまうのです。ポセンシアで手術をお受けになられた大勢の患者様の中で、傷の治りが早い方と遅い方がどうしてもいらっしゃいます。
そのひとつの原因が消毒の仕方なのです。
抜糸の時にかさぶたをいっぱいつけて来られる方がいらっしゃいます。
このような方は相対的に傷の治りが遅くなっていらっしゃいます。
話を聞くと、傷に触れるのが怖くてあまり消毒ができなかったとおっしゃる方が多いようです。
また、消毒を傷口をぬらすという感覚でされる方は、かさぶたができてしまう場合が多いようです。
かさぶたを作らないように出血をしっかりとふき取るという感覚で消毒をされた方が良いと思います。
(当院でも一般的に使われているのでそれに従って消毒と言う言葉で表現していますが、消毒という言葉自体が不適切だと思います)
また、できてしまったかさぶたは取り除いた方が良いのです。
かさぶたは感染源になるばかりではなく、創部の間にできると傷口を開いてしまいます。
これは傷が遅く治ったり、きれいに治らない原因となります。
せっかくきれいに縫合しているのに、傷口をかさぶたが開いてしまうのです。
かさぶたができた場合は、優しく取り除いて下さい。
初期の段階であれば、綿棒などで弱い力で力を加えれば取れます。
それで取れない場合は、かさぶたのまわりを何度も濡らします。
お渡しした消毒液でも結構ですし、水道の水でも結構ですので綿棒を湿らせてかさぶたと皮膚の間を湿らせていると、かさぶたは水溶性で水に溶けて段々と弱くなり、そのうち弱い力でもはずれるようになります。消毒液でなくても通常の上水道の水で良い理由ですが、
- 上水道中に細菌はほどんど含まれていない。
- 水道水に大腸菌を混入させた実験で、大腸菌は時間とともに減少し、増加することはない、
つまり、水道水中で細菌が増殖することはないと考えられる。 - 細菌が検出されたとしても、それが創感染を起こす起炎菌であることはない。
以上の理由から、「水道水には雑菌が含まれるため、それで洗浄すると感染が起こる」ことは、通常の水道水では考えられないということになります。
どうしてもかさぶたがはずれない場合は、当院までお越し下さい。
有料になってしまいますが、血液を溶かせる薬を用いてかさぶたを取り除きます。
また、目頭切開法やフェイスリフトなどで、傷をできる限りきれいに治したいという方が術後のケアで来院されることもございます。
これらも有料になりますが、対応させていただいております。(参考文献:これからの創傷治療 医学書院)